歌のちから。音楽のちから。こころの癒しに音楽を
こんにちは!
今回は、歌のちから、音楽のちからについてのおはなしです。
片麻痺と失語症がある利用者さんと、歌を通じてのリハビリにより、歌や音楽のちからを目の当たりにしました。
そののち音楽療法士さんと出会い、さらなる音楽の可能性を知ることができました。
そんな歌と音楽のおはなしです。
ことばのコミュニケーションができない
わたしがはじめてデイサービス施設へ勤めたときのおはなしです。
そこはいわゆるリハビリ特化を特徴とした施設でした。
基本的に歌のレクリエーションはありませんでした。
その施設に、脳梗塞の後遺症による、右半身まひと失語症をわずらっていた利用者さんがおられました。
わたしにとって失語症は初めてみる疾患でした。
そのかたのことをTさんとしていきます。
Tさんは、”トイレ”と言いたいところを、”ドア”と言ってしまったり。
”ありがとう”を言おうとすると、”わかりました”と言ってしまう、錯誤タイプの失語症でした。
筆談も、言葉を正しくつくれないことによる影響で、できませんでした。
「わかります」と「わかりました」だけが唯一すらっと出る言葉でした。
当初はコミュニケーションの取り方がまったくわからず、わたしをふくめほかの職員も途方にくれていました。
Tさんもコミュニケーションが取れないことで、いらだちをあらわにすることがありました。
歌声がきこえる
歩行などのリハビリに対する意欲も低く、むりにすすめると怒ってしまうという状況でした。
わたしはなにもできず、まいってしまっていました。
なので、Tさんのご利用日はいつも気が晴れませんでした。
そんななか、ひとりの介護士さんがなにかできることはないかと、自分で言語訓練などを考えて、Tさんに取り組んでもらえるように試行錯誤していました。
そんなある日のこと、なにやら歌声が聞こえてくるのでした。
歌のレクリエーションはしていなかったので、めずらしいなと思いました。
そしてよく聞いてみると、なんとTさんの歌声でした。
「ふーけゆくーあーきのよー」
はっきりと歌詞のとおり歌われています。
「えっ⁉ことばが出ないんとちゃうん?」と思いました。
よくみると、さきほどの介護士さんといっしょに歌っているのでした。
歌は「旅愁」でした。
あれだけ言葉が出ないのに、歌はこんなに上手に歌えるんだ。
それは衝撃でした。
脳の中では、言語を作る機能と、歌をうたう機能は別にあることを知りました。
裕次郎がだいすき
Tさんは歌が大好きでいろんな歌を知っていました。
そんななかでも、石原裕次郎さんの歌が大好きでした。
裕次郎さんの歌は、全曲歌えるレベルでした。
音楽は最強のリハビリ
そして歌をつうじて、急速に心の距離を近づけることができました。
だんだんと距離が近づいたところで、歩行のリハビリをすすめてみたところ、気前よく取り組んでもらえるようになりました。
そしてそれからは、リハビリのときはスマホで裕次郎さんの歌をかけながら取り組んでもらいました。
屋外を歩くときも、大音量で裕次郎さんの歌をかけ、「銀座の恋の物語」や「夕陽の丘」、「ブランデーグラス」など、いっしょに歌いながら歩きました。
歩行訓練のコースは駅前だったので、みんなこっちを見ていました。
わたしは恥ずかしかったのですが、Tさんはおかまいなく歌っておられました。
そして、あれだけリハビリきらいだったTさんなのに、どんどん歩いていくのでした。
歩き終わったあとも、スマホを手にとって歌い続けていることもよくありました。
歌のちから。音楽のちから
リハビリもせず、施設でただ座ってすごすだけだったのに、歌ひとつでここまで元気にさせてしまう。
Tさんは、「旅愁」を歌ったあの日から、みるみる明るくなっていきました。
施設でのTさんは、ことばはでないけど、愛嬌のある、みんなの癒しのひとになっておられました。
Tさんによって、歌のちから、そして音楽のちからをまざまざと見せつけられました。
音楽には、こころの奥底にはたらきかけるものがある。
そして、こころにはたらきかけることの大切さを教えてもらいました。
そんな気づきをくれた介護士さんにも、感謝の気持ちでいっぱいです。
なんでも音楽になる
そののち、べつの施設で音楽療法士さんといっしょに働くことができました。
そして、いろんな音楽の使い方を教えてもらいました。
その方から、どんなものでも音楽になるんですよと教えていただきました。
机をたたくだけで、それが音楽になるんですよ。
すごく大切なことを教わった気がしました。
こころにアプローチするということの、なにかのヒントが見えた気がしました。
いまのわたしは、日常のなかで音楽を意識するようになりました。
そうすると、祭りばやしや鐘の音、川のせせらぎ、林のざわめき、鳥のさえずり、 波の音、お経にいたるまで、あらゆるところに音楽があることが見えてきました。
それが癒しになるのだなと思えるようになりました。
こころの癒しに音楽を
歌だけが音楽ではなく、あらゆることが音楽になります。
そうした音楽を意識してみることで、こころの癒しとなるものがたくさん見つかるかもしれません。
音楽にはまちがいなく素晴らしい力があると思います。
音楽に身もこころもゆだねる時間をつくってみてはいかがでしょうか。
きっとこころに良いことありますよ!
今回はここまでで!
最後までお読みいただきありがとうございます!
みなさまに幸せが届きますように!
感謝!
▷あわせてお読みください
「104歳で「人生は楽しいね!」と言われるスーパーポジティブな方のはなし」
「病が重くとも前進できる(1)ほんねで接することのたいせつさ」
「病が重くとも前進できる(2)生きがいとはなに?携わる者にできること」
「生きがいに本気で向き合う。クライアントさまと生きがいについて語る」